投げ銭ライブで朗読。dyuuという名義で出た。
伴奏をSupersize meの多田くんに急遽お願いしました。

この1ヶ月くらい前から詩を書いたり消したりしていたけど、身近な事を書いたら?という大濱くんの薦めで、近所の子供のことなどをしゃべっていく合間合間に、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を挟んでいく形に、本番直前の数時間でまとめた。

自信が本当になかったので告知もせず、録画も録音もせず、それでも仲のいい友人がみんな見に来てくれていて、嬉しかった。
飴屋さんの「顔に味噌」で喋った、二十歳の誕生日に、からはじめてみたけど、最終的にそれが霞んで、ちゃんとこの先更新していけそうだな、というのがわかって、本当によかった。

続けていきたい。

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二十歳の誕生日に

僕は実家で

お母さんに

僕の生まれてきたところを

見せて

言いました

断られました

 

ジョバンニは、なにかたいへんさびしいようなかなしいような気がして、だまって正面の時計を見ていましたら、ずうっと前の方で、ガラスの笛のようなものが鳴りました。汽車はもう、しずかにうごいていたのです。

カムパネルラは、車室の天井を、あちこち見ていました。その一つのあかりに黒いかぶとむしがとまってその影が大きく天井にうつっていたのです。

赤ひげの人は、なにかなつかしそうにわらいながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ていました。汽車はもうだんだん早くなって、すすきと川と、かわるがわる窓の外から光りました。

赤ひげの人が、少しおずおずしながら、二人に訊ききました。

「あなた方は、どちらへいらっしゃるんですか。」

「どこまでも行くんです。」ジョバンニは、少しきまり悪そうに答えました。

 

あれから8年経って

今僕は28歳になりました

就職してみたりやめてみたり

恋をしてみたりふられたりしながら

1年前に

京都に引っ越しました

 

実家のすぐ近くには

大きな竹やぶがあって

夜に青白く光っていたのを

今も覚えています

 

お母さんにこの前久しぶりに会いました

髪が白くなって少し小さくなっていました

 

僕の生まれたのは

夜の2時だったと聞きました

雪が降っていたそうです

 

実家の壁に

朱色の小さな足型が飾ってあって

それが生まれたときの僕の足だと

聞きました

 

僕の生まれて初めての記憶は

赤ちゃんが使う

歩行器を

妹と取り合って

妹の腕に噛み付いた時の

感触です

3歳くらいだと思います

 

それより前

記憶の前

僕は

なんだったのかな

なんだったんだろう

 

それより前

記憶の前

のもっと前

 

「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。」

 いきなり、カムパネルラが、思い切ったというように、少しどもりながら、せきこんでいいました。

 ジョバンニは、

(ああ、そうだ、ぼくのおっかさんは、あの遠い一つのちりのように見えるだいだいいろの三角標のあたりにいらっしゃって、いまぼくのことを考えているんだった。)と思いながら、ぼんやりしてだまっていました。

「ぼくはおっかさんが、ほんとうにさいわいになるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだろう。」カムパネルラは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。

 

僕の好きな〜〜さんという人が

ある人に赤ちゃんができて

その人のお腹が少しずつ、太っていって

ある時から動き出して

生まれる

それまで10ヶ月くらい

お母さんの一部だったものが、

でも急に2人に切り離されるんじゃなくて

実は僕らとお母さんは

その後もずっと1つなんじゃないか、って

電車の中で言っていました

 

「ザウエルという犬がいるよ。しっぽがまるで箒のようだ。ぼくが行くと鼻を鳴らしてついてくるよ。ずうっと町の角までついてくる。もっとついてくることもあるよ。今夜はみんなで烏瓜のあかりを川へながしに行くんだって。きっと犬もついて行くよ」

 

近所に住んでいる

ちはるちゃんという、大好きな子供がいて

6歳の女の子で

たまに2人でテレビゲームをしたりします

気づいたら僕も

たまに家に来るよくわからない大人に

なったんだなあ、って

思います

 

夏休みの自由研究で

賞味期限についてノートにまとめているのを見ました

先生はなんて言いましたか?

何年か先に

28歳のこの僕は

彼女のどういう記憶に

なってるんだろう

 

「僕もうあんな大きな暗やみの中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」

「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」カムパネルラは俄にわかに窓の遠くに見えるきれいな野原を指して叫さけびました。

 

夜に横たわって星と自分との距離を、親指と人差し指でつまむ

寝返りをうつ

寝返りをうつ

寝返りをうつ

 

この星の自転に乗って

その上にただ座って

今日も夜に向かう

 

「きみのおっかさんは、なんにもひどいことないじゃないの。」ジョバンニはびっくりして叫さけびました。

「ぼくわからない。けれども、誰たれだって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思う。」カムパネルラは、なにかほんとうに決心しているように見えました。

車のなかが、ぱっと白く明るくなりました。見ると、もうじつに、金剛石こんごうせきや草の露つゆやあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河の河床かわどこの上を水は声もなくかたちもなく流れ、その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射さした一つの島が見えるのでした。その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架じゅうじかがたって、それはもう凍こおった北極の雲で鋳いたといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。