今、大井さーん、大井さーん、って僕を呼ぶ声がフラッシュバックして、なんだと思ったら、去年の3月頃に浅草のアパートにガス料金を徴収しにきてた東京ガスの女の人の声だ。

目立たない感じの人で、でもできるだけ、やさしい女性的な声を出そうと緊張して整えてる感じの、変わった声で、その人の声がすると、身をぐっと固めて音をたてないようにして、ひたすら、過ぎ去るのを待っていたんだった。

向こうだって少しおびえながら声を出していたのかもしれない。
元気でいるかな。