旅行中の手紙を元にした朗読。もえないこみゅーん、というイベントで発表しました。
Supersize me.の多田くんとの2人です。

ありがとうございました。

前回のdyuu → http://ooikenji.jp/katsudou/dyuu

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dyuu ido

 

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おーい

こちらでは、カモメがいっぱい飛んでいます
ふと上を見ると、
建物の合間を、
たくさんのカモメが
びゅんびゅんと
飛んでいるのが見えます。

カモメの声は、キャーキャーという、変な声です。
朝起きてから夜寝るまで、ずっと聞こえます。
きっと聞こえない時も、鳴いています。

それは、こんな声です。
(鳥の鳴き声)

そちらは元気ですか?

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ここにいると、
そちらで何を楽しんだり
悲しんだり
不安を感じたりしていたのか
全然わからなくなってきます

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飛行機

離陸してから着陸するまで
ずっと窓の外を見ていました。

遠い下の方に
赤いレンガの街並みが見えて
だんだんとそれは大きくなって
街並みが
家に
窓に
レンガに
どんどん
近づいていって

それは
同じものなのに
どんどん
変化していって

遠くから
近づくこと

近くから
遠ざかること

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10年来の友人と
本当に久々に会いました

不眠症になってしまった彼は
どこに行くにも
ほとんど24時間
ギターを引き続けています

夜に2人きりになった時、
目の前にいるこの彼が
僕の記憶の中の彼と
本当に同じ人間なのか
ふと
わからなくなりました

空を見上げると
宇宙は真っ黒な平面で
星が
いくつも
光っています

犬がほうぼうから鳴き
その下を、遠く川が流れ
たまに走っていく車の音
子供の声
そしてその後ろを
小さくずっと
流れ続けている
風の音

多田)

カモメ
 Larus canus

漢字では
かもめ、
と書きます。

それでは
38ページ、
みんなで、
声を揃えて
音読しましょう

大井)
チドリ目の
カモメ科の
カモメ属の
カモメ

多田)
もう一度、
みんなで、
声を揃えて
音読しましょう

大井)
チドリ目の
カモメ科の
カモメ属の
カモメ


風がびゅーっと吹いて

僕の体
が、
確かに今
ここにあること

すべての記憶が
僕の体によって
作られたこと

すべての記憶が
僕の体の中に
あること

すべてのものが
この体によってしか
存在しないこと

この体に始まりがあったこと
この体に終わりがあること

その間の
線分を
記憶にしていくこと

その外側があること

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久しぶりに
父親に電話をかけました

僕が遠くにいると言ったら
嬉しそうな声で驚いていて
そんなことは初めてでした

父親のいつも使っている製図机には、
1987と書いてあって、
それは僕の生まれた年です。

今も
彼の体が
生きていること

今も
新しい記憶が
生まれ続けて
いること

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多田)
Animalia
Aves
Lari
Laridae
Larus
L. canus

Larus canus brachyrhynchus
Larus canus kamtschatschensis
Larus canus heinei

たのしいたびに、なるように

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大井)

建てかけなのか潰れかけなのか、
随分がらんとした建物の中で
コーヒーを飲んでいます。
港は、潮の臭いが全然しなくて、
なにか人口の湖のそばにいるような、
随分そっけない雰囲気です。


街が実在しないこと

同時に

この街に降ってくる雨や、吹いてくる風が
建物や、僕らや、犬や猫や、地面を、
かたどっていること

それは数万年前にも
同じように
この地面の隆起や、鳥や虫を
かたどっていたこと

風が吹くこと
小枝が揺れていること
足の下に地面があること

1人で、
そこに
立っていること

僕の声を
僕が聞いていること

カモメの声を
僕が聞いていたこと

カモメが
遠く
あちらで
今も
鳴いていること
        
それは
こんな声でした

(カモメの声)

 

 

おーい

そちらは元気ですか?

僕は
風邪をひいています。